イーサリアム(Ethereum)は、暗号通貨の世界でビットコインに次ぐ存在感を持つプラットフォームとして知られています。
その歴史は、2013年に当時19歳だったヴィタリック・ブテリンという若者が提案したアイデアから始まります。
ブテリンは、ビットコインの限界を感じていました。
ビットコインは価値の保存や送金に優れていますが、複雑なプログラムを実行する機能が不足していたのです。
そこで彼は、ブロックチェーン技術を活用し、スマートコントラクトと呼ばれる自動実行可能な契約を可能にする新しいプラットフォームを考案しました。
これがイーサリアムの原点です。2014年にはクラウドファンディングを通じて資金を調達し、2015年7月30日にイーサリアムネットワークが正式にローンチされました。
ネイティブ通貨である「ETH(イーサ)」は、ネットワークの運営や取引手数料(ガス代)に使われます。
スマートコントラクトの革新
イーサリアムの最大の特徴は、スマートコントラクトです。
これは、条件が満たされると自動的に実行されるプログラムで、信頼できる第三者を介さずに取引や契約を実現できます。
例えば、不動産の売買契約をスマートコントラクトで記述すれば、支払いが確認された瞬間に所有権が移転する仕組みが作れます。
この技術は、金融、ゲーム、サプライチェーン管理など、さまざまな分野で応用が期待されました。
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ローンチ当初から開発者コミュニティが急速に成長し、イーサリアムは「分散型アプリケーション(DApps)」の基盤として注目を集めました。
2016年には「The DAO」という分散型投資ファンドが立ち上がり、1億5000万ドル以上を調達しましたが、ハッキング事件で約5000万ドルが盗まれるトラブルも発生しました。
この事件をきっかけに、イーサリアムはハードフォーク(分岐)を行い、現在のイーサリアムとイーサリアムクラシック(ETC)に分裂しました。
ICOブームと成長
2017年、イーサリアムは大きな飛躍を遂げます。
スマートコントラクトを活用した「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」がブームとなり、多くのプロジェクトがイーサリアム上で独自トークンを発行しました。
ICOは、企業や個人が資金調達のためにトークンを販売する仕組みで、イーサリアムはその基盤として広く利用されました。
この時期、ETHの価格は急上昇し、数ドルだった価値が数百ドルにまで跳ね上がりました。
しかし、詐欺的なICOも横行し、規制当局の介入を招く結果となりました。
それでも、イーサリアムの技術的な可能性は高く評価され、企業向けの「エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)」が設立されるなど、商用利用も進みました。
マイクロソフトやJPモルガンといった大企業が参加し、イーサリアムの信頼性がさらに高まりました。
イーサリアム2.0への移行
イーサリアムの歴史において、2020年代は大きな転換期となりました。
従来のイーサリアムは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という仕組みで運営されており、マイニングに膨大な電力が必要でした。
これがスケーラビリティ(拡張性)や環境負荷の問題を引き起こしていたのです。
そこで、イーサリアム2.0(現Eth2またはコンセンサスレイヤー)へのアップグレードが計画されました。
このアップデートでは、「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」に移行し、エネルギー効率を大幅に改善するとともに、取引処理能力を向上させることを目指しています。
2022年9月15日、「ザ・マージ(The Merge)」と呼ばれるイベントでPoSへの移行が完了し、イーサリアムは99.95%のエネルギー消費削減を実現しました。
これにより、環境に優しいブロックチェーンとしての地位を確立しました。
DeFiとNFTの台頭
イーサリアムの歴史を語る上で欠かせないのが、分散型金融(DeFi)と非代替性トークン(NFT)の台頭です。
2020年頃から、DeFiプロジェクトがイーサリアム上で急増しました。
UniswapやAaveといったプラットフォームは、中央機関を介さずに融資や取引を可能にし、金融の民主化を進めています。
ETHはこれらのサービスで基軸通貨として使われ、需要が急増しました。
一方、NFTはデジタルアートやコレクタブルアイテムをブロックチェーン上で所有できる技術で、2021年にはCryptoPunksやBored Ape Yacht Clubが話題となり、数億円規模の取引も生まれました。
イーサリアムはNFT市場の主要なプラットフォームとして、クリエイター経済を支えています。
未来への課題:スケーラビリティと競争
イーサリアムの未来を見据えると、いくつかの課題と可能性が浮かび上がります。
まず、スケーラビリティの問題です。
PoSへの移行で改善が進んだものの、取引手数料(ガス代)の高騰や処理速度の限界が依然として課題です。
これを解決するため、「シャーディング」という技術が導入される予定で、ネットワークを分割して処理能力を高めます。
また、レイヤー2ソリューション(OptimismやArbitrumなど)も普及し、低コストで高速な取引を実現しています。
しかし、SolanaやBinance Smart Chainといった競合ブロックチェーンが台頭しており、イーサリアムは開発者やユーザーの支持を維持する必要があります。
競争が激化する中、イーサリアムの強みである豊富なエコシステムとコミュニティの力が試されます。
イーサリアムの未来展望
イーサリアムの未来は明るいとされています。
2025年現在、ETHの価格は変動しつつも、長期的な成長が期待されています。
DeFiやNFTの市場は拡大を続け、メタバースやWeb3といった次世代インターネットの基盤としての役割も注目されています。
企業や政府がブロックチェーンを採用する動きも加速しており、イーサリアムはその先駆者として位置づけられています。
例えば、サプライチェーンの透明性向上やデジタルIDの管理など、現実世界での応用が進むでしょう。
さらに、環境意識の高まりに適合したPoSへの移行は、持続可能な技術としての評価を高めています。
ブテリンは「イーサリアムは世界のコンピュータになる」と語っており、そのビジョンが現実味を帯びてきました。
まとめ:イーサリアムの可能性
イーサリアムは、ビットコインを超える柔軟性と革新性で、暗号通貨の歴史に名を刻みました。
スマートコントラクトやDAppsの基盤として成長し、DeFiやNFTで新たな経済圏を築いています。
課題は残るものの、技術的な進化とコミュニティの力で未来を切り開くでしょう。
投資家や開発者、そして一般ユーザーにとって、イーサリアムは今後も注目すべき存在です。